茨城大学・菊池新学長に聞く

平成16年10月11日・日経新聞

街づくで連携に意欲&戦略的に重点研究強化


今年四月に国立大学法人に移行した茨城大学の学長に九月一日付で菊池龍三郎氏が就任した。少子化や国費削減など地方大学を取り巻く環境が厳しさを増す中でどのようなかじ取りを考えているのか聞いた。

大学の特色をどう打ち出すのか。
 「学長選では茨城大を教育面で全国有数の国立大に育てると掲げた。教育は『厳しく、ていねいに』との姿勢で臨む。例えば学生の評価法に米国などで採用されているGPA(グレード・ポイント・アベレージ)制度を導入したい。厳格な評価を目指す手法の導入で水準を高める」

中期計画で重点研究の育成を盛り込んだ。
 「文部科学省の『21世紀COE(卓越した研究拠点)プログラム』に今年度二件応募したが、採択されなかった。本学の実績はまだゼロ。国内外の科学技術の潮流について情報収集が弱い。政策面でどの分野の研究が有望なのか、いち早く情報を集め、戦略的に重点研究を育てていく」
 「学内には四番バッター級の有力研究者が理工系だけで十人程いるが、支援体制は十分といえない。十月をめどに学長特別補佐職を新設、研究環境の整備や戦略作りを担ってもらう」

産学連携、地域貢献への取り組みは。
 「ひたちものづくりサロンなど地元企業との協力活動もあるが不十分。工学部がある日立市などから『地域に頼りとなる大学になってほしい』と言われている。研究者だけでなく学生が地域に入っていくことが重要だ」 「人文、教育の文系学部も連携余地は大きい。市町村合併が進む中で地域づくりで大学が持つ知識を提供できる。教育では東海村と組み地域の教育力・社会力再生計画プログラムを立ち上げようという構想もある。早稲田大学が東京都墨田区と結んだ連携協定などの動きは参考になる」

経営改革は。
 「経営協議会には私も参加してきたが、学外の委員から何を期待されているのか分からないという指摘を受けるなど試行錯誤の段階だ。学費は現行水準を維持する方針で値上げは考えていない。学生の満足度を高めるため学生サービスマスタープランを作成中。学生証のICカード化など進めたい」